私が子供ができた知らせとともに久々に実家に帰ったら、懐かしい日記があった。



『今日は終業式。私は、おばあちゃん家に行くから、いつもより早く(ママには内緒だけど、いつもは友達とおしゃべりするの!)学校を出たんだ。
そしたら、帰り道の途中にある原っぱで、不思議な子がいたの。
私より小さい、小学一年生ぐらいの男の子。
うれしそうにたんぽぽを見ているけど、あんな子見たことない。
「君なんていうの?」
って私が聞いたらその男の子。何にも言わずに逃げて行っちゃった!
その事をおばあちゃん家行く途中の車の中でママに言ったら、
「その子はきっと小波さんの家の子だわ、あのね、池紗」
それからママは、その子が『しょうがい』を持っていて後ろから話しかけられたりするとビックリしちゃう事を教えてくれたの。
今度見かけたら、ちゃんと目を見て声をかけてあげようっと!

おばあちゃん家から帰ると、なんだかママもパパも疲れちゃって遊べないって。一人でお外で遊んできなさいって。
公園もないし、お外でうろうろしてたら、原っぱの男の子を思い出したの。

それで原っぱに来たらやっぱりいた!よぅし!ちゃんと目を見て声をかけるぞぉ!
「ねぇねぇ、いつもここにいるの?」
私がそう言うと、最初はビックリしてたけど、前みたいに逃げないで、うんってうなずいてくれたの!やったぁ!
それからいろいろお話してたら、おなかがグゥって鳴っちゃって、お昼の時間だって気がついたの。
またねって手を振っておうちまで走って帰ったんだ。

それから毎日原っぱで光太君(あの男の子の名前!)と遊んでたんだ。

今日は始業式があって、明日から学校が始まるの。原っぱに、光太君いるかなぁ?
原っぱに行ったけど、光太君、いなかったんだ。
どうしたんだろう。』



そこで日記が途切れてた。
そういえば、この日記、何でこんな綺麗な状態なんだろう。もう十年近く前のものなのに・・・。
その日は母さんが夕食を作ってくれて、久しぶりに親子で食事をとった。
そのとき日記の話をしていたら。小波さん家の子の名前を忘れてしまって、母さんに聞いた。
「小波さんの家の子?
ああ、あの障害を持っていた子ね、たしか、秀平君とか言ったわねぇ。」
「秀平?そんな名前じゃないわよ。
たしか、光助とか、光平とか、とにかく光がついたと思うわ。」
なんだか変な気がして、向きになって言い返してしまった
。母さんはちょっとだけビックリしてたけど、またすぐ普通になって、
「光か、そういえばあなたの弟、光太って言うのよ言ったかしら?」
「『光太』確か日記のあの男の子もそんな名前だった気がする。そういえば、弟って?」
今の母さんの歳じゃ子供を生むなんて考えられないし。
「あら、覚えてないの?二歳年下の光太君。
たんぽぽの柄の手ぬぐいとか用意していたのに流産しちゃって。
あら?池紗?」
全部わかった気がした。
ずっと綺麗に残っている日記も、始業式から姿を消した理由も。
そうだ。あの頃私は、友達なんていなかった。
いつも遅く帰ったのは、汚れた上履きや、足跡のついた服を洗うため。
光太君は、私の弟、光太は、私を慰めてくれたんだ。
新しいクラスでは友達もできたから光太は姿を見せなかったんだ。
ありがとう。光太。
「母さん、私子供の名前まだ決めてないんだけど光太にしていい?
光太にお礼をしなきゃならないから」
































初めは自閉症等の障害への偏見、誤解を
解くための話にしようとしてたのに、
見事に違う方向へ進んだ物語。
逆に誤解が深まった気がしないでもない…。orz