これは、今から3万年ほど前の話である。
全宇宙の中でもトップにある五大星ミュリケル。
ここは、悪魔の降りた星である。
ある日の夕方大きな音がして、僕の周りから、生命以外の全てが無くなった。
僕の住んでいる町はミュリケルの中でも大きな都市、リィだ。
リィの子供たちは、よく遊びでサラへ行く。
僕らは光を反射しない。
そのせいでサラにすんでいる生物には僕らが見えないのだと、昔父ちゃんが言っていた。
サラにいる生物を、僕らはサラ虫と呼ぶ。
でも僕は、虫というのはかわいそうだから、サラ人と呼んでいる。
これを聞くと、大人は怒る。『サラ虫なんかと一緒にするな』と。
サラにいる生物は、サラの事を地球と呼ぶ。サラというのは白の別名でもある。
僕らはサラは白いと思う。雲というものに包まれている。
雲というものは僕らの星には無いからうらやましい。
サラはミュリケルから離れているのでサラがこっちに気付く事は無い。
でも、たまに、サラ人にも見える物で、ラインを作る。ラインとはライに出るときの船だ。
ライは上を見るとあるあの星がたくさんあるところのことだ。
僕の家は貧乏だから、僕はまだサラに行った事はない。きっと綺麗な星なんだと思う。
サラ人はこの前生まれたばかりで、僕らと違って歴史が全然無い。
でも、僕はうらやましい。
自分達でものを取って、食べている。いろいろな食べ物があってうらやましい。
僕たちの食べ物はルースといって、おやつ用と、栄養の多い食事用のものがある。
色は銀色で味はない。おやつ用は味がないのに甘く感じる。
舌から脳じゃなく、脳に直接信号を送っている。だから味はないのに甘い。
食事用も少し違う味があったりする。でも、すぐに全部の種類を食べてしまう。
おいしくない。何が足りないのかわからないけど。おいしいとは感じない。
僕はこの星は変だと思う。
皆つまらなそうで、相手を蹴落としてばかりだ。
だから僕は毎日祈る。
こんな生活抜け出したい。神様、僕を、この星を御救いください。
でも、神様はこんな願い、聞いてくれない、聞こえないのかもしれない、遠い遠いところに住んでいるから。
でも僕はいつも祈る。
もう、何度祈ったのだろう。
ピーーーーーーーーーーーーィ
高く、大きな音が鳴った。聞いたこともない音。機械の音とは違う。高い音だけど、優しさがある気がした。
僕がそんな事を考えている間に、目の前が一瞬真っ白になった。
次の瞬間辺りには僕らリィの町には生命、つまり、人間しか残っていなかった。家や機械、人工食料。全部、僕ら以外全部なくなっていた。
僕らは、隣町に行った。でも、行く途中、見えていた景色がいきなり消えた。同じことが起きた。
皆が叫んだ。
『この星に悪魔が降りたんだ。』
どうしよう。僕のせいかもしれない。
僕があんまり祈るから、だから神様が御怒りになって、それで、それでこの星に悪魔を来させたのかも。
僕は、どうしたらいいのだろう。何か、僕に何か出来ないのかな。
「おい、ラインが、ラインが一つ残っているぞ。」
誰かが叫んだ。この近くだ。
「これで他の星に連絡を入れよう!」
若い男の人が言ったのが見えた。
でもとなりにいた人が首を振った。
「ダメだ。こんな事、他の星のものに知られたら。」
皆それに続いた。
「そうだ。五大星の名を取られてしまう。」
「あっという間に最下位だ。」
「支配される。」
反対する人もいた。
「死ぬくらいなら五大星の名を取られるくらいどうって事ないだろう。」
「ああ、その通りだ。プライドよりも死をとると言うのか!?」
言い合いは長く続きそうだった。
でも、僕はもっといいこと知ってるよ。
連絡もしないで、死ななくてもすむ方法。
「サラ人の生き方を学ぼうよ。」
つい、言葉に出しちゃった。皆こっちを見てる。
皆はサラ人をよく思っていない。
そんな事も忘れてた。怒られる。
「サラ虫に?はっ。あいつらに学ぶものなんてないね。」
「おいおい、いちいち真に受けるな。所詮子供の戯言さ。」
怖い。どうしよう。
「いや、ちょっと待て。その者の意見を聞こうじゃないか。」
群がる人の向こうのほうから聞こえてきた。
姿は見えないけど、星主様だ。星主様はこの星で一番偉いお人だ。
特にこの109代目星主様は異例の若さで星主の位を受け継いだすごい人だと父さんに聞いた。
「星主様。この者の意見を聞いて何になるというのですか。」
最初に僕を怒った人だ。
「聞くだけ聞いてみようじゃないか。」
星主様がこっちを見て「早く言いなさい」と、おっしゃった。
頭が真っ白だ。ええ、と。サラ人は、自分たちで、ああ、声に出さなくちゃ。
「ええ、と。サ、サラ人は自分たちで、食べ物をとって生きています。
ルースと違い、木や水の中にいる生き物をとって食べています。
生き物を食べる事は全宇宙協会で禁止されていますが、え、と。
木に生っているもの等は、禁止されていませんし。
えと。あ、あ。いや、え、と。サラ人達の生き方を見習って、ああ、いえ、別にサラ人のほうが優れているとかそういうことじゃなく、サラ人のような生き方をすれば、ルースを作らなくても大丈夫かな。と、植物ならここでも育ちますし。
ええと。あの。そういうことです。」
「つまり?サラ虫のように植物に生っているものを食えばいいと?」
怒ってる。すごいこわい声だ。
「ほう。いい考えだ。」
星主様。
「星主様、どうなさいますか?」
付人の御方だ。星主様の代理人もする。
「行かせて見よう。よし、この者にサラ行きを命ずる。」
僕が、サラに行くの?
「ハハ、そう困惑した顔をするな。
サラの星の者とともに2日間行動をとり、生き方を学べばよいのだ。
植物ももってこい。こちらには観賞用の植物しかないのでな。
ここには食べ物がない、早く食べ物を持ってくるように。」
「はい。」
うれしい。
サラに行けるし、もしかしたら皆にサラ人を受け入れてもらえるかもしれない。
「星主様、ありがとうございます。」
ラインには乗ったことないけど、いつも説明書を見てたから、乗り方は知ってる。
よし。
「行って、しまった。本当に、大丈夫だったのでしょうか、星主様。」
「ああ、私はあの少年にかつての私を見た。この星、いや、この宇宙の誰より生きているものの目だった。失敗したら私が責任を取る。よいな。」
不安な顔が減っていき、星主様の言葉を皆が信じた。
「はい。」
星の者全員が答えた。
二日後
ラインが見えた。
少年は一回り大きく見えた。
幸い餓死したものもいなかった。
時は流れ3万年後
この少年の話は語り告げられていた。
この星の者はよく、サラに留学しに行く事が多い。
五大星ミュリケル
天使の降りた星
植物が生い茂り、人や動物が生き生きと住む星
「第110代目星主様、サラの星に住む方々。今日の食事をありがたくいただきます。」
The end
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